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朝日新聞(5/28・6/4)の記事に関して その1 〜どうか安心しておっぱいを飲ませてあげて!〜

5月28日、朝日新聞の生活面を開いた私は、
その大きなタイトルに思わず見入っていました。
そして、内容を読むうちに「何?これは?」と驚くばかりでした。

読まれた方も多いと思います。
「完全母乳 観察が大事」という大見出しで始まるその記事は、

「低血糖で脳に障害起こる例も」
「カンガルーケアでも要注意」

という文字に導かれ、その内容は、
「経膣分娩で正常に生まれてきた赤ちゃんで、
低血糖によるけいれんや脳障害が起きた事例」が2例紹介され、
続いて、
「正常分娩で生まれた赤ちゃんがカンガルーケア中に
心肺蘇生を必要としたケースが2例あった」ことについても
書かれています。

しかも、囲みの中には、
あたかも90年代からの「過度な母乳推進で」
「精神的プレッシャーを感じる母親」が増えたと受け取られかねない
解説がありました。

日本母乳の会の橋本武夫先生のコメントが
わずかに添えてありましたが、
全体を読んで受け取れるのは、
あたかも、出産直後の母乳分泌不足によって脳障害を受ける危険が
(多くの場合に)あるかのような雰囲気なのです。

しかし…です。
よく読めば、こうした症例がどの程度報告されているのかも
書かれていないのです。
こうした事例があるから、医療者は観察を怠らないように、という
警鐘であれば、まだ理解できるのですが、
これだけ大きく、しかも生活面で掲載されているとなれば、
一般の母親、そしてその家族が目にし、不安になるのではないか…
そう話し合った私たちは、
朝日新聞に投書してみることを考えたのでした。

そうこうしているうちに、
なんと、第2弾が掲載されたわけで、それが6月4日。
これまた、生活面で、またまた大きく取り上げてありました。

「母乳育児 柔軟性をもって」との大見出しで始まる記事は、
「完全母乳推進の行き過ぎは母親を追いつめ、
栄養面でも注意が必要ではと危惧する医師や助産師も出てきた」
と続きます。

私も常々、
「完全母乳」なんていう言葉が、
しかも「完母」「完母」と語られるくらい
若い母親の中に浸透していることに疑問をもっていました。

結果として、ミルクに頼らずともおっぱいで育てることができたら、
それは素敵なこと。
でも、「完全」なんていう言葉を使うばかりに、
頑なな気持ちになり、
自ら追い込まれるようなことになってはいないだろうかと
ふと不安になることがありました。
「完全母乳」にとらわれることは、
決して赤ちゃんとお母さんにとっても、
その後の子育てにとっても、
幸せではないと思っています。

だからといって、
最初から粉ミルクを足すことが最善と証明されたわけではないのです。
にもかかわらず、
生活面にこのように大きく掲載されることは、どうなのでしょう。

科学・医学ではすべて語り尽くせないほどの長い間、
哺乳動物はそれぞれのやり方で母乳を与え、子を育んできたわけで、
そこには、まだ解明されていない優れた点もあるでしょう。
でも、優れているから与える、ということではなく、
それが自然な命のあり方だからこそ、母乳を与えるのだと考えます。

ただ、どうしても事情で与えられない場合や不足する場合には、
医療手段としての人工乳(ミルク)で補う
ということなのだと思うのです。
必要な医療介入ですから、
根拠(エビデンス)があってしかるべきと考えます。

むやみに与えるのではなく、どういう方法で与えるべきか、
もっときちんとした根拠に基づいた指導があるべきでしょう。
そして、
どうやったらミルクで育てる場合にも
母乳の優れている点を補うことができるのか、
そうした研究がもっとなされ、指導があって初めて、
ミルクで育てざるを得ない母親たちも
母乳で育てられなかったことにネガティブな思いを抱くことなく
安心して子育てできるのではないかと思うのです。

日本ではかつて、
「ミルクのほうが優れている」とさえ宣伝された時期がありました。
母乳が優れていることがようやく広まり、
やっと母乳育児の指導が少しずつなされるようになってきた、
という段階です。

96%もの人が母乳で育てたいと願いつつ
まだまだ支援やケアが足りないために、
実際に母乳だけで育てられる人は
その半分にも満たないというのが現状です。
母乳育児指導が行き渡っていない1つに、
ミルクの場合の指導も含まれるでしょう。

赤ちゃんにおっぱいを飲ませたい…
その素朴な母としての思いをかなえるために、
私たちは何をどう支援していけるのか、あらためて考えています。

赤ちゃんを抱きしめているお母さんたち、
どうか、今回の記事でむやみに不安になったりしないでください。
そして、
その周囲にいるみなさん、
どうかお母さんの「母乳で育てたい」気持ちに寄り添ってあげてください。

今回の記事については、
ラクテーション・コンサルタントという母乳育児指導の資格をもった
医療者の団体、日本ラクテーション・コンサルタント協会(JALC)からも、
緊急声明が出され、
科学的根拠にもとづいていない記事であると批判されました。
(以下のURLに、全文が掲載されています
 http://shizen-ikuji.jp/thread15677.html#post34587 )

どうか、ゆったりと幸せな気持ちで、
赤ちゃんにおっぱいを飲ませてあげてくださいね。

Posted by ito at 2008年07月04日 06:06

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