アタッチメント・サイクル

親から子へとめぐる―― アタッチメント・サイクル Attachment Cycle     バーバラ・ニコルソン(API理事長)
 生まれたてのころの自分が、親とどういうアタッチメント(愛着関係)を育んだのかを知ることで、成人してからの自分の人間関係、とりわけ結婚相手との関係について、いろいろなことがわかってきます。それだけではありません。いまわたしたちが必死になって築こうとしている子どもとの関係が、彼らが将来成人したときに育む人間関係の確固たる土台をつくりあげる、ということまで見えてきます。
この「アタッチメントのサイクル」を世に紹介したふたりの人物は、成人後の人間関係パターンと、生まれてすぐに育まれた人間関係――つまり赤ちゃんと親との関係がつながっていることを発見しました。
 1995年に発行されたChild誌のなかで、『あなたのお子さんは、愛する幸せを得られますか?』という論文を掲載したロバート・カレン博士は、臨床心理学メでもあり、『Becoming
Attached』(ワーナー・ブックス1994年刊)の著メでもあります。彼は、子どもが将来、愛する幸せを得られるかどうかは、アタッチメントの理論にかかっていると主張しています。
「いまや専門家も、赤ん坊と母親(あるいは父親かその他のおもな世話人)のあいだに育まれる『安定したアタッチメント』が、子どもの心理学的発達に重大な役割を担い、温かく、迅速で頼りになる反応が、将来子どもが愛する幸せを得られるかどうかを左右することを知っている」。
 では、「安定したアタッチメント」とはどういうものでしょうか? 子どもにとっては、自分の要望は、いつも変わらず、迅速に、そして愛情たっぷりに満たされる、と安心していられることです。自分は愛されているし、態度がよかったからとか、ほかの条件が揃ったから褒められているのではなく、ありのままの自分が認められている、と認ッすることです。
たいていの家庭では、生まれてから数年のあいだ、おもにアタッチンメントを育む相手はお母さんですが、お父さんはお父さんで、大切な役割を担っています。母親と父親の両方と強いアタッチメントを育んだ子どもは、成人すると、感情的に豊かな人間関係を築きます。お父さんは男の子にとってはお手本で、女の子にとっては純粋な意味での初恋相手となります。お父さんは、子どもが社会に飛びだすときの最初の踏み台であり、お父さんとお母さんの関係は、その子が将来配偶者を選ぶときの基準となります。
カレンの論文によれば、しっかりとしたアタッチメントを育んできた子どもは、成人したとき、「恋愛の相手により深い愛情と信頼を抱き、心を開く傾向にある。人に頼ることにも、自分が頼られることにも、抵抗を感じない。プラスの感情も、マイナスの感情も、たっぷり持ち合わせている」といいます。
 教育学が専門のスーザン・ジョンソン博士も、1994年、Psychology
today誌の3・4月合併号に、このテーマについての論文を掲載しています。題して、『愛情――接触を求める不変の切望』。セラピストとしての経験から、彼女はこう考えるようになりました。
「アタッチメントは、成人後の恋愛を見通す最適のレンズである……アタッチメントの理論をもとに、人間関係をどこでどうしくじるのか、そのときどうしたらいいのかを見通すことができる」。
彼女によれば、成人後の人間関係が必要とするものは、子ども時代に必要としていたものとさほど変わらないのだといいます。こちらの目をしっかり見つめてほしい、ふれてほしい、愛撫してほしい、抱きしめてほしい――恋人に求めるそうした安心感とやすらぎを、わたしたちは親にも求めていたのです。
 彼女はこう説明します。「人間の個性は、他者とかかわり合いながら発展していく。自分の内部から自然にわき起こってくるものではない。アタッチメントを得るには、人間として他者に依存することが不可欠だ。自給自足などというものは、ありえない」。彼女はさらに、ジョン・ウェインのような、他人の助けをいっさい必要としない無口な人物像は、想像の産物でしかない、と警告します。親密にふれ合いたいと思えば、無防備でいること、そして心を閉ざしてしまう前に自分から手を差しだすことが必要条件なのです。ところが不満だらけの結婚生活では、その逆のことが起きています。手を差しだす前に、心を閉ざしてしまっているのですから。
 いま紹介したふたりとも、最後は希望観測的な意見で結んでいます。たとえ親と最高の関係を築けなかったとしても、過去をくり返すとはかぎらないのです。わたしたちは、新しい経験を重ねながら、大人としての安定した人間関係を築き上げ、成長し、変わることができるのです。たいていの人がお気づきでしょうが、自分自身の子育てが大きな癒しとなるおかげで、染みついた過去のパターンを変えることができます。アタッチメント・ペアレンティングが、配偶者との関係を驚くほど深めてくれることもしょっちゅうです。長い目で見れば、アタッチメント・ペアレンティングから得られるものは大きい――それがわかれば、ときおりちょっとした障害にぶち当たっても、夫婦で乗り越えよう、と意欲がわいてきます。愛と理解だけでなく、逆境と困難を分かち合うことで、夫婦として成長することができるのですから。
バーバラ・ニコルソン: アタッチメント・ペアレンティング・インターナショナル理事長 Barbara Nicholson, M.Ed. : API Founder
& President, Board of Directors
1994年に、リサ・パーカーとともに、APIを設立。ラ・レーチェ・リーグのボランティアとして、20年以上、母乳育児のサポートグループのリーダーをつとめている。テキサス州で特殊教育の教師として勤務したのち、4人の息子を育てた。
Barbara Nicholson holds a masters degree in Education and is President of the
Board of Directors for API, which she co-founded with Lysa Parker in 1994.
Nicholson makes frequent presentations about the effects of parenting on
societal violence. Nicholson has extensive experience as a support group
facilitator, special education teacher and mother. She has served as a volunteer
with La Leche League for more than twenty years, where she facilitates support
groups for breastfeeding mothers. Nicholson has a masters degree in education
and was a special education teacher in Texas. She is the mother of four sons.