思い通りの子育てなんてない 。よく観て、じっと待って~須田きよえ

須田きよえ​
自然育児友の会会報 2011年あき号より

 はじめまして。ヨガのインストラクターをしております、須田きよえと申します。8年ほど前よりカフェスローでヨガの教室をさせていただいており、事務局があったことから自然育児友の会を知りました。実際に会員になったのは2年半程前、出産がきっかけです。初めて子育てというものに出会って、育児は育自というし、未知の世界にワクワク♪なんだか面白そう! と簡単に思っていました。ところが実際に子どもが生まれると、それははるかに想像を超え試練の日々。確かに育自。子どもが生まれなかったら通りすぎていただろう自分の心の弱さを知ることになり、それに向き合い、悩み、迷い、失敗の中から多くの気づきをいただきました。
 お産は、元気に勢いよく生まれてきてくれて、その時は、あ、ほんとに出てきた、すごいな~と結構冷静でした。そして感じたのは、この地球上で今まで生きてきた人々と同じように、私も命を生めるカラダを持っていたんだ、命を受け継いで、つないでいけたんだ、という安心感でした。そして、ほっとしたのも束の間、本当によく泣く子でした。おっぱいがうまく吸えなかったので、始めは乳首をくわえるのに20~30分かかってやっと、というような感じで必死でした。なが~い授乳時間の後、おっぱいを離すと泣き、抱っこで寝て布団におろすと泣き、乳首は切れて痛いし、なぜこんなに泣くのか、なぜこんなに気難しいのか、どうしたらいいのか分からずに私も泣いてばかりの日々でした。
 いまになって振り返ると、赤ちゃんとあまりにも密着していて、すごくがんばりすぎていました。不快な思いをさせないように、なんでもわかってあげて、泣かさないように、守らなきゃ! してあげなきゃ! という気持ちがとても強かったのです。赤ちゃん以外のことは、夫のことも自分自身のことも二の次で、赤ちゃんが100%すべて! の生活でした。一ヶ月検診のとき、取り上げてくださった助産師さんは「自分だけのことならなんとでもできる。でも自分がどんなにがんばったって、どうにもならない存在があるのよ。」とおっしゃいました。母と子は一心同体だけれど、そうはいっても別々の存在だということ。違う人間のすべてを理解し、コントロールすることなどできないということ。そのころは無我夢中でそれが分からず、自分がなんとかしなきゃいけない、この子のためにああしなきゃこうしなきゃと必要以上に力んでいたのです。


イラスト・大野まみ

 それでも何とか1年が経ち、その頃住んでいた部屋が狭かったので引越しをしたちょうど同じ時、「森のようちえんクスクス」に出会いました。自然の中で育てたいと思っていたのですぐに入園を決め、親子参加の野外での活動が始まりました。母は手は後ろ、口はチャックが約束事です。始めのころは泣いてぐずって、抱っこばかりでした。歩こうとしないので、ほら行ってごらん、やってみよう! というのも我慢して、自ずからやろうとする気持ちを待ちます。クスクスではとにかく待ちます。大人は忍耐強く、けんかしても子ども同士の解決を待って見守り、子どもが周りを観察したり、なにかに集中したり、考えている時間を大切にします。私は何ヶ月も抱っこばかりの日が続き、精神的にも身体的にも大変で、疲れてぐったりする日もありましたが、やめようとは思いませんでした。そこには自然の中で仲間と接しながら、だんだんと少しずつですが成長していく子どもの姿に、驚きと感動があったからです。
 また、今までの子どもへの接し方を反省することにもなりました。私は子どもに対して、やってあげたい気持ちばかりが先行して、なんでも必要以上に手を出して、いつも先回りして、危険なものから守るためにバリアを張っていたと気づかされました。子どもが動こうとする前に手を出す、なにか言おうとする前に声をかける、そんな積み重ねが自らやろうとする気持ちを邪魔して、成長する機会をうばっていたのです。特に慎重な性格の我が子は、何をするにもまずじっと観察して考えていたのに、早く行動することを期待し、大人の時間の感覚で接してしまっていました。もしクスクスに出会わなかったら、依存的な、自ら考えることのできない子に育ててしまったかもしれません。クスクスの目指すところは「自らの力で道を切り拓ける子に」大人の言いなりでなく、自分の考えと体験を通して学び取ったものは、生きるねっこになるはずです。
 なぜ手を出し、口を出しすぎてしまうのでしょう。それは母子の密着した生活にも一因はありますが、根底には子どもを自分の思い通りにしようという気持ちがあるからだと思うのです。今まで私は、自分の力で生きているんだと、思うがまま自由に生きてきました。そして子育てにおいても、自分の思い通りになると考えていたから、苦しくなって、うまくいかなかったのです。私を育ててくれた親がいて、多くの人々の支えがあり、いのちは食べ物によって育まれ、その食べ物を育てる大きな自然の力があり、それらによって生かされているのだ、ということを忘れていました。ご縁に助けられ、自然の力に助けられ、「生きている」んじゃなくて「生かされている」と気づいたとき、心の力みがとれ、心の奥に引っかかっていた不安感がなくなっていました。
 できたらいつも、そんな豊かな気持ちでいたい、でもやっぱり日々いろいろあって、穏やかではいられない時もあります。それでも一日一回でいいから、いのちへの感謝の気持ちを思い出そうと思います。余裕がなくなってイライラしたり、くたくたに疲れてしまうこともあるけれど、立ち止まって、手を止めて、よく観て、待って、感じて、そんな時間を大切にしたいと思います。

■須田きよえ プロフィール

一児の母。ヨガインストラクター。元看護師。英国ITECホリステックセラピスト、アロマセラピスト。国分寺カフェスローにてやさしいヨガクラス(毎週火曜日)開催中。小金井市の集会所で子連れヨガクラスもやっています。yogaft@gmail.com